TIM WHEELER DEBUT SOLO ALBUM - LOST DOMAIN Released on Oct 29th 2014 ティム・ウィーラーのファースト・ソロ・アルバム『ロスト・ドメイン』のルーツは、ティムがまだ少年の頃、北アイルランドのダウンパトリックにいた時までに遡る。ティムの父ジョージは仕事から帰ると家族の為にピアノを弾き、ティムの3人の兄弟に歌を歌っていた。その影響でティムはピアノを弾きたくなった。そしてティムはギターにも興味を持ち、それがバンドに発展。学校の二人の友達と共にASHが結成されるようになった。ティムが21歳になる前にASHのアルバムはチャートの1位を記録。グラストンベリーでヘッドライナーをつとめた最も若いバンドとなった。ジョージはレコード店を訪れ、ASHのアルバムをいつも前面に移動させていた。「気恥ずかしいくらいに父さんは僕を誇りに思っていたんだ」とティムは語る。 ティムは北アイルランドを去り、ロンドンへ移り、今はニューヨークに住んでいる。しかし40年以上にも及ぶ父との固い絆は残っていた。「父さんはスマートで理にかなった人だった。そしていつも僕の為にそばにいてくれた。僕らは本当に親しかったんだ」とティムは語る。ジョージが急速に老人性痴呆症になっていったことにティムが大きく傷ついたのは疑いの余地もない。「父さんとはいつも一緒にいた。だからアルツハイマーの父さんを見ることは大きなとまどいだった。本当に理にかなった頭の良い人が、実際にはない物を見始めて、本当に誇大妄想になってしまったんだ。悪化する父さんを見ることには耐えられなかった」とティムは語る。老人性痴呆症になってから6ヶ月後、妻と子供たちに看取られて2011年にジョージは他界した。その後、感情の波に襲われて、ティムは「父について曲を書く」という彼がとれる唯一の方法に取り掛かるようになった。「起こったことを処理しようと思ったんだ。ある意味、書くべきことがあったので、このアルバムの曲を書くのは本当に簡単だった。なぜなら書く必要があると僕は感じていたからね」とティムは語る。 『ロスト・ドメイン』は、ティムが自身の損失と向き合えるように格闘するアルバムだ。病気になり亡くなった父と、それがティムや彼の人生、そして他人との関係性に及ぼした影響を11曲の中に込めたアルバムだ。「言いたいことを全て網羅するにはフルレングスのアルバムでなくてはならない、とわかったんだ」とティムは言う。一方アルバムは、外に向かっていて時に飾り気のない作品なので、涙を誘うような作品ではない。実際、アルバムを通して、喜びと希望の瞬間は心痛と悲しみの中で輝いている。「ヴィジル」ではジョージの最後の瞬間をドキュメントした感動的な曲だが、ティムの家族の強さと緊密さをセレブレートする曲でもある。「とてもつらい時間だった。けど、同じようにとても美しい時間でもあった」とティムは言う。また、あなたが想像するほど内省的なアルバムでもない。この間、ティムはサウンドトラック(最も有名なところではMat Whitecrossの映画『Ashes』や『Fleming』のTVシリーズ)も手掛けていたことも影響して、アルバムは、「アイヴァー・ノヴェロ賞」も獲得したミュージシャンが作った最もリッチで完成した作品にもなったのだ。「アルバムの中には大きなエモーションが存在している。しばし自分はとても"大きく"感じられる音楽(ビッグサウンドな音楽)をつくりたがっている、と僕は気付いているんだ」とティムは言う。実際、アルバムの中にはビッグなサウンドがある。ストリングス、ホーン、エレクトロニクスが『ロスト・ドメイン』にエモーショナルな要素を加えている。またブルージーなオープニング曲「スノウ・イン・ナラ」や、5/4拍子のジャジーな「ヴェイパー」といった2曲のインストゥルメンタルの曲も収録されており、これらも感動的な瞬間の一つだ。しかし、おそらく、アルバムの中で最も感動的な曲は、アルバムの中心曲となる「メディシン」だろう。「ある一日を病院にいる父さんに会うことから始めたんだ。で、今までに見たことがない父さんを僕は見たんだ。で、1年後、僕は3、4日間、自分のアパートにこもりっきりになっている時があった。動くのが大変で、すべての経験を書き留めようと試みたんだ。書くのに本当に心が痛んだ曲だよ」とティムは語る。その結果、あなたの頭の中で、10分にも及ぶ悲惨な病院でのドラマのサウンドトラックが流れる。この曲は、激しく揺れる音の流れ以外は、ジョージとの時間が、繰り返される同じコードのシーケンスで構築されている。ストリングスのアレンジャーのアシスタントはこの曲の歌詞を読んだ時に涙を流した。 ASHはアジアと北アメリカを今年はツアーでまわり、2015年には新しい曲も発表される予定なので、ASHの動向はもちろん大きな関心事である。一方、『ロスト・ドメイン』はソロのレコードなのだ。「リックとマークはとても僕をサポートしてくれる。だから彼らはこのアルバムは僕だけで作り上げる必要があったということを解ってくれるはずだ」とティムは語る。ティムはニューヨークにあるASHのスタジオで、自ら費用を負担して、アルバムをレコーディングした。彼は大半の楽器をプレイし、助けが必要な時はミュージシャンのつてを利用した。アンディ・バロウズ(元レイザーライト)とフレッド・アスペリン(アルバータ・クロス)がドラムのいくつかをプレイした。ロンドン・メトロポリタンン・オーケストラで演奏していたIlan EshkeriとOliver Krausがストリングスとブラスのアレンジの手助けをした。リアン・マコンバー(イジェクタ、ネオン・インディアン)がヴォーカルの一部を担当した。Wenzl McGowen(ムーン・フーチ)がニューヨークの地下鉄で偶然ティムと会った後、サックスをプレイした。「メディシン」の中では、ティムの父がプレイしたピアノもサンプリングされている。 このアルバムの収益の一部はアルツハイマー協会に寄付される。「アルバムがリリースされることに僕は少しナーヴァスになっているんだ。とても無防備でオープンな作品だからね。けど、誰もが関係するような内容の作品になっている。アルバムの中の美を見つけてくれたら、と思うよ」とティムは言う。『ロスト・ドメイン』はレアな力を持った感動的な作品だ。才能を持ったソングライター/ミュージシャンが、自分の中で大きな意味を持つことを全てレコードの中に詰め込んだ、作ることが避けられなかった作品だ。アルバムがどんな評価を受けるかはわからない。ただ、ティムにとっては明らかに価値のある作品なのだ。「自分が何を行ってきたかを理解する手助けになった作品だ。形にすることができて本当に嬉しい。このアルバムはカタルシスのプロセスなんだ。父さんに聴かせられれば、と思うよ」とティムは語る。多くのことをこのアルバムは与えてはくれない。なぜなら他の多くの人たちも経験することだから・・・。 Lost Domain tracklisting: 1. Snow In Nara 2. End of An Era 3. Do You Ever Think of Me? 4. Hospital 5. Medicine 6. Vigil 7. First Sign of Spring 8. Vapour 9. Hold 10. Lost Domain 11. Monsoon 12. Ariadna* 13. Riad* 14. Sheltered Youth* 15. One Last Song* *Bonus Tracks |
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